藤井工房

元町港へと歩いてると、必ず見かけるのがここ「藤井工房」。
その外観がとっても特徴的で、いつもこの丸い屋根の緑のドームハウスを横目に、港へと急ぎます。

工房と言うからには、きっと何かしらの工房なのだろうと思っていたのですが、ある日「喫茶」もやっているという噂を耳に、意を決して入ってみることにしました。
でもよくよく見れば、「KEY COFFEE」という看板もありましたね。

藤井工房に入ってみると、喫茶という雰囲気よりは、やはり「工房」という色が強いです。
私が入店した時は、店の人は誰かと話しているようで、対応はして頂けませんでした。

普通ならば、店員さんが対応してくれるまで入口で待ちぼうけ・・・というところですが、工房内に置かれている工芸品にしばし目を奪われ、勝手にいろいろ見学してしまいました。

ここは「藤井工房」という名のごとく、「あんこ人形作り体験」が出来るそうです。
最初から掘ることも出来るそうですが、2時間ほどかかるようです。
色だけ付けることも出来るようで、それなら1時間ほどで出来るそうですが、不器用な私なら色付けだけでもきっと2時間かかるなぁ。

ちなみに、「あんこ」という言葉は大島に来た人なら必ず耳にすると思います。
これは大島の方言で「島の娘さん」という意味です。
まだ昭和初期の頃、島では重労働の日々で、女性も重い荷物を頭に乗せて運んでいたそうです。
その際に女性たちが着ていた作業服と、頭に重い荷物を乗せて歩く姿が彫刻家などに目にとまり、現在の「あんこ人形」となって語り継がれているのだそうです。

こちらは「あんこ猫」です。
最初に見た時は、少し怖いと感じていたのですが、今ではすっかり私はあんこ猫のファンです。

なんと、この藤井工房にて、あんこ猫の貸し出しも行っているそうですよ。
この写真の中に写るあんこ猫さんも、写真家さんたちによって撮られたものなのでしょうか。

さて、本題です(笑)
私は今日はあんこさんの木彫り人形を見に来たり、作りに来たりした訳ではありません。
「珈琲を飲みに来た」のです。

早速お店の人に席まで案内して頂きました。
入店した当初は、他にお客さんは見当たらなかったのに、注文をし終えてから団体のお客さんが来たようで、一気に席が埋まりました。

のんびりとあんこ人形を眺めながらの珈琲は絶品でした。
時がゆっくり流れて行くような気分にさせられます。

のんびり珈琲を飲んでいると、ふと自分の座るすぐ横の壁に、こんな地図が貼られているのを見付けました。
よくよく見ると、大島町元町の地図であることが分かりました。
ただ、現在と少し位置関係の違う建物もいくつか発見。

更によくこの地図を見てみると、「昭和40年の大火で、昔の元町は消滅しましたが、心の中にはその消滅した筈の元町が未だ生きています。」という言葉が書かれていました。
この地図により私は初めて、昭和40年に大島町元町を襲った大規模な火事の事を知りました。
「大島大火」と呼ばれているようです。
元町市街地の約7割、大島町の3割を焼失する大参事だったのだとか。

と言う事は、この地図はその大火事の前の元町の位置関係ということかと思うと、当時の人たちの胸の苦しみが伝わってくるようでした。
昭和40年と言ったら、そこまで遠い昔の話ではありません。
当時をよく知る町民も多数いることでしょう。

この藤井工房に来て、この地図を見て、ほんの少しだけ大島の過去に触れたような気がしました。
こんな大惨事、二度と起こしてはいけない。
そんな言葉が、地図から聞こえてくるようでした。

Posted by sima-life